ご挨拶

全国児童心理治療施設協議会会長
広島市こども療育センター
「愛育園」園長
(精神科医)
西田 篤

 私たちの児童心理治療施設は、第二次世界大戦後、その社会的混乱に伴う青少年の行動的な逸脱や情動的な混乱に対して早期に対応すべく、昭和36年(1961)年に、前身の「情緒障害児短期治療施設」として、児童福祉法上に定められました、そして、翌年の昭和37(1962)年に、最初の施設が岡山県に誕生しました。以来、その時代の社会的なニーズに応えたり、心理的な行きづまり状態にある子どもやその家族への支援を行うために、その数が増えてきました。令和6(2024)年現在、全国で53を数えています。施設種別の名称も、平成28(2016)年に、現在の「児童心理治療施設」に変わりました。
 ところで、青少年の心の問題を時代の流れに沿ってみますと、上記の戦後の混乱期以降、1970年代は登校拒否や家庭内暴力、80年代はそれらに加えて校内暴力やいじめの問題が拡大しています。90年代には、少しずつ家庭養護の問題が増えてきています。2000年代に入ってからは、被虐待の問題が拡大し、2010年代以降は、発達障害の問題も加わっています。現在、私たちの目の前にいる子どもは、大きくは、学校課題、家庭課題、発達課題の3つの課題を、それぞれのバランスと割合で抱えています。
 そうした子どもを支援するにあたって、私たちは「総合環境療法」を、その基本的な理念としています。トータルなアセスメントに基づき、それぞれの子どもの周囲にある環境や関係を心理面、生活面、教育面から再構成し、修正、成長、再育成を図ろうとしています。「治療的」な支援にこそ、私たちの施設の「固有性」があり、児童福祉の領域に、「医療的(治療的)」な理念と方法論を導入している施設です。
 これまで触れたように、それぞれの時代の要請に応える形で、私たちの施設は存在してきました。これからも、子ども同士の、あるいは子どもとスタッフ間の、さらにはスタッフ同士の、温かい関係性を基軸に、こつこつと、目の前の「心のゆきづまり状態」にある子どもやそのご家族ために頑張ろうと思っています。なんらかの「心の困り事」を抱えておられる皆様には、是非、近くの私たちの施設にお問い合わせいただければと思います。

令和6(2024)年9月